この記事を書いている3/14現在、ヨーロッパのような爆発的な感染者数の増加がみられないものの、まだまだ国内における新型コロナウイルス流行が沈静化する様子はありません。
今のところ、薬剤師・薬局スタッフ感染による急な閉局・閉鎖のニュースが耳にしていませんが、今後そのようなことがおこる可能性はゼロではありません。医療従事者の一員と考えれば、むしろ一般人よりもその可能性は十分高いと考えるのが普通です。
そのため、薬局管理者は単に予防を励行するだけでなく、実際にスタッフが感染してしまった場合に備えて、ある程度想定されるトラブルとその回避策の準備をしておくことが重要です。
2011年の東日本大震災や2009年の新型インフルエンザ流行を経験し、いわゆるBCP(事業継続計画)を書面で準備しているところもあるかと思います。
しかし、今回のような指定感染症の流行では、自薬局だけ突然閉局背ざる負えなくなり、関係者(隣接医療機関・患者さん)に多大なご迷惑をおかけすることになります。そのため影響を最小限に留める対応策を具体的に想定しておく必要があります。
今回はマンツーマン型調剤薬局を想定し、準備しておくべき内容をまとめてみました。
(あくまで2020.3.14段階での対応策案です)
隣接医療機関への事前相談・連絡
もし、薬局スタッフが新コロナウイルス陽性と診断された場合、これまでのケースを踏まえると、保健所の指導により「施設の消毒」に迫られることが十分に考えられます。
この場合、どの程度の時間を要するにもよりますが、否応なく一時閉局が迫られることになるのは想像に難くありません。
そうなると、当然隣接医療機関が診察・処方箋発行を行っていても応需することができません。そして一番困るのは患者さんです。
その為、隣接医療機関に事前にそうなってしまった場合の対応策を話しあっておく必要があります。
離島や過疎地で近隣に全く薬局がないケースは別として、当面は他薬局で調剤してもらう他ありませんが、患者さんに出来るだけ不都合が生じないようにすることが必要です。
具体的には、隣接医療機関に対して、他薬局では在庫が無さそうな薬剤や規格の情報提供、不要な疑義紹介を減らすために処方箋と一緒に渡すようなメモ(疑義紹介方法・事後連絡でOKな内容など)を作成するのも一つの方法です。例えば併売品(ジャヌビア・グラクティブ等)のある医薬品は、それに伴って逐一連絡されるのは面倒なはずです。
また医療機関への問合せの電話を最小限にするため、地域の薬剤師会に協力してもらい、処方箋を応需した場合の対応方法や小分けの対応について、地域薬局にFAX通知してもらうのも有効な方法です。(疑義紹介の簡素化)
慢性疾患患者で郵送OKなら
慢性疾患の患者さんで、数日分薬に余裕があり、特に定期処方が変わりない場合は郵送対応も可能になるでしょう。この場合の流れについても、事前に隣接医療機関とその方法を決めておくとよいでしょう。
中には、感染者が出た薬局から郵送されたくないとい患者も出てくることが予想されるので、ドミナント出店している場合は、他の店舗で調剤し郵送する必要に迫られることも考えておいたほうが良いでしょう。
協力してくれそうな近隣薬局に事前に相談しておく。地域薬剤師会も活用
薬局を運営していれば経験があるでしょうが、普段応需していない処方箋が来ると、「レセコンに医療機関を登録」「薬がない」などの対応で結構面倒です。そして何よりも困るのが、それによって常連の患者さんを待たせることになることです。
そのため、もしもの時に協力してくれそうな近隣薬局には、事前に話を通しておくと良いでしょう。もちろん、逆に自薬局が協力する側になる場合もあるので、お互い情報交換しておくことは損になりません。
普段からレギュラースタッフを敢えて他薬局に分散勤務させる
もし、勤務スタッフが新コロナウイルス陽性だった場合、職場内のスタッフ全員も「濃厚接触者」扱いとなる可能性があります。その場合「自宅待機」背ざる負えないケースもあるでしょう。
多店舗展開している企業なら、他店舗からの応援でしばらく対応することが予想されますが、「少し手伝ったことがある」程度のスタッフだけでは、業務がかなりもたつくことになります。
そのようなリスクに備えて、業務に精通しているスタッフを、敢えて濃厚接触者扱いにならないように、他店舗で勤務させておくというのも、一つのリスクヘッジになります。特に新コロナウイルス流行により患者数が減っている医療機関・薬局も多いので、余裕のあるうちに対策をしておくべきです。
また、休憩・昼食時間もお互いづらすことで、職場内の濃厚接触も減らすよう工夫も求められます。
全員がレセコン入力できるようにしておく
薬局によっては、薬剤師が全くレセコン入力の仕方がわからないという企業があります。
効率的な運営の為に、調剤・投薬業務と事務業務を完全分業しているケースもありますが、中には事務的な仕事に口を挟んでもらいたくないと、薬剤師にレセコン入力は「やらせない・やらせたくない」という企業もあります。また、薬剤師側が拒否反応をしめす場合もあります。しかしながら、今後の非常時に備えて基本的な操作はできるようにしておきべきでしょう。最悪一人だけでも、一連の業務をこなして、お薬を渡せるようにしておくべきです。
対応策はできるだけ文書化して、とにかく関係者に事前に伝えることが誠意
とにかく対応策はいろいろなケースを想定して、関係者(隣接医療機関・患者さん)への影響を最小限、かつ早急に対応できるようにしておくことが重要です。
その為には、まず対応策を整理・文書化して関係者内で共有しておくことが重要です。
また、このような資料を作成する場合、完璧を求めて時間をかけてしまうケースがありますが、感染はいつ起こるかわかりませんので、とりあえず粗削りでも第一報という形で、とにかく早めに作成することが重要です。
これを機にWeb会議システム導入も検討を
今回の新型コロナウイルス流行で、大手企業ではいわゆる「テレワーク」「ウェブ会議」の実施が結構行われていますが、ネット環境さえあれば中小企業においても決してハードルが高いものではありません。
(Zoom ホームページより)
例えば、Zoomを使用すれば40分以内のWeb会議ならフリー、時間制限なしでも廉価な価格でウェブ会議を実現できます。(但し、一般に無料ツールはセキュリティ面での不安がどうしてもあるので、社外秘情報をWeb会議で扱うのは注意してください)
また、オンラインウェブ会議システムは、使い方次第では、発熱・感染疑い患者さんへの服薬指導にも利用できます。事前に隔離スペースに薬を準備し、スペース内に設置したパソコン越しに服薬指導を行うことも可能です。
無線LAN・リピーターを使用すれば、多少薬局の外にスペースを作っても通信できるでしょう。
とにかく、このような非常時には社内での情報共有が重要になりますので、多店舗経営している場合は、これを機に積極的に活用することもお薦めいたします。ZoomやSkype等の活用方法については、改めて記事にしたいと思います。
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