資格学習系・個人のYouTube動画投稿はいつまでも増え続けるのか?

マーケティング

ありがたいことに中小企業診断士試験や登録販売者試験の講師をさせて頂く機会がありますが、ここ数年の学習環境の大きな変化として、YouTube(ユーチューブ)など動画を利用した学習方法が急速に普及していると感じています。

自身も受験勉強をしていた5年程前までは、動画数も少なく、しかも良質な動画も限られていた印象ですが、現在は数も豊富で様々な優れたコンテンツが(広告表示はあるものの)無料で利用でき、受験生にとっては非常にありがたい時代になったと思います。

そして、動画投稿(主にYouTube)される企業・個人の目的・理由は様々かと思いますが、主に以下のような理由が考えられます。

(特に企業)
・動画をみてもらうことで、受験への動機付けを行い市場を増やしたい。
・動画をみてもらうことで、(収益とつながる)本事業へと顧客を誘導したい。
・競合他社が積極的に行っているので、顧客流出を防ぐためやらざる負えない。

(個人・ユーチューバー)
・自分の得意な分野の知識を、色んな人に知ってもらいたい。
・儲かっているユーチューバーの話を聞いて、あわよくば自分もそうなりたい。
・視聴者数が増えることによる達成感・満足感
・収益が得られることによる達成感・満足感
・動画編集が結構楽しい。

特に資格試験系の動画については、その参入障壁の低さから、個人からの投稿動画が非常に多く投稿が増え続けています。

一方で、合格者数をある程度絞りこむことが求めらる「資格試験」という側面をみると、昨今の受験関連動画の増加は中期的には以下のような課題・問題点があると思っています。(あくまで私見ですが・・)

受験生の得点率が上がり、試験問題が複雑化する恐れ

国家試験を含めて、得点率によって合否がきまるような資格試験については、動画を活用することで、より多くの受験生に「効率的な学習」や「頻出ポイント」を押さえた学習が浸透し、全体として得点率が上がる可能性があります。

一見これは良いことのように思えますが、現実的に国家試験では「合格者を絞る」必要があります。つまり、ある程度の受験生を落とす必要があるため、全体の得点率が上がってきた場合、作問者はさらに問題を難しくしていくことになるでしょう。
そうなると、合格率を調節するために「重箱の隅をつつく」ような問題や、過去問からはまったく対処できないような奇問・難問・悪問が年々増えてしまうことに繋がる恐れがあります。
いわゆる、出題者と受験生の間の「イタチごっこ」が激しくなるかもしれません。

大手資格試験予備校の衰退の恐れ

ユーチューブ等の良質なコンテンツによって、受験生の「情報はタダで得られる」感覚が浸透することで、当然大手予備校へのニーズが減少し、受験生獲得競争が厳しくなることが考えられます。

もちろん、司法試験等の難関資格や中小企業診断士の二次試験など、特別なノウハウが必要な分野については引き続き大手予備校へのニーズが続くと思われますが、自己啓発系や比較的易しい資格試験については、最低限の市販のテキスト+ユーチューブで十分といった考えが今後益々浸透することが考えられます。

結局、講師業の単価・収益が下がる?

優れたコンテンツを提供できる、ごく一部の個人・ユーチューバーは、利益を独占できる可能があります。
また、個人で動画配信を行うことで、大手予備校等に依存せず、いわゆる「中抜き」をされずに講師業を行うことも可能かもしれません。

一方で、本来有料で提供されるレベルのノウハウが(一時的にも)大量に無料提供されることにより、業界全体としての価格崩壊を起こす恐れがあります。
特に参入障壁の少ない分野ほど、これによって講師間での価格競争も激しくなり、一部の講師による独占と、講師業の単価の低下につながると思います。

中長期的には投稿数は収束していく?

但し、中長期的に見た場合に、個人・ユーチューバーを中心とする資格試験系の動画投稿数は落ち着いてくる可能性もあります。
動画投稿は、初期投資も特に必要なく始められる点や、再生数が増えることによるモチベーションの向上、さらに数十円数百円でも収益が得られた時の高揚感などから、暫く動画投稿の意欲が続くかと思います。特にコロナ禍によって、全般的に再生数が獲得しやすい状況では尚更でしょう。

しかしながら、暫く経過すると「費やしている時間が全く割に合わない」と感じる方が多く発生すると思います。特に最近は個人レベルでも、効果音やテロップなど、かなり凝った動画編集が多く、差別化の重要な要素となっていますが、いくら慣れたとしても結構時間を取られている筈です。

また、良質なコンテンツの提供で、一度バスった(多くの再生数を獲得)としても、次々にそれを真似て作られた動画投稿がなされるので、継続的に視聴者数を維持するのは並大抵ではないでしょう。

このような理由から、今後投稿数はある程度収束することも予想されます。

今後どのような変化が求めらる?YouTubeに対抗できる?

それでも、資格試験の勉強については、やはり生講義に参加することで、モチベーションを維持したい・高めたいといったにニーズもあります。また、特に地方で勉強している受験生にとっては、Zoom等を利用したオンライン講義は、非常に便利ですので、今後もうまく活用され続けると思います。

また、会社からの業務命令でとるような資格(IT系や登録販売者など)の場合は、特に生講義の方がモチベーションを維持しやすく、今後「オンラインでの生講義+復習用の講義配信」といった形式が増えてくるかもしれません。

いずれにしても、YouTubeなどの動画配信が増えることによって、資格試験ビジネスに関連する企業・講師は様々な変換を求められるかと思います。しかしながら、動画配信プラットフォームに対するニーズは引き続き高まることが予想され、改めてその優位性やビジネスモデルの高さを痛感させられます。

 

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